日本の酒造りは、職人たちの情熱と伝統の技術によって支えられてきました。
古くからの製法を守りながらも、時代の流れと共に進化し続ける日本酒業界。
その中で、島根県大田市にある一宮酒造は、130年の歴史を誇る老舗として、地元の素材にこだわり、唯一無二の酒造りを続けています。
今回は、2017年より女性杜氏としてスタートし、現在は三児の母として酒造りをしている浅野理可さんに、一宮酒造の歴史やこだわり、そして未来への展望についてお話を伺いました。
古くからの製法を守りながらも、時代の流れと共に進化し続ける日本酒業界。
その中で、島根県大田市にある一宮酒造は、130年の歴史を誇る老舗として、地元の素材にこだわり、唯一無二の酒造りを続けています。
今回は、2017年より女性杜氏としてスタートし、現在は三児の母として酒造りをしている浅野理可さんに、一宮酒造の歴史やこだわり、そして未来への展望についてお話を伺いました。
一宮酒造について
一宮酒造の成り立ち
- 一宮酒造はどのようにしてできたのでしょうか?
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一宮酒造は、もともとお醤油屋から分家し日本酒造りを始めたことにあります。以来、兵庫県の但馬杜氏を迎え、冬季に酒を仕込む伝統的なスタイルを受け継いできましたが、杜氏の高齢化が進み、自社の職人による酒造りへとシフトしていきました。
私が戻ってきたときには、杜氏さんはすでに70代でした。これからのことを考えたとき、自社で酒造りを行うことが必要だとなり、10年前から体制が変わりました。
現在では地元の素材にこだわって酒造りをしていきます。仕込み水には三瓶山の伏流水を使用し、酒米も地元産にこだわっています。
ここにあるもので、ここにいる人間でしか作れない酒を造りたいと思っています。
- お酒のラインナップについて教えてください
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一宮酒造の代表銘柄は「石見銀山」、世界遺産にも登録されている石見銀山にちなんだこの酒は、華やかな香りとすっきりとした飲み口が特徴になります。
また、Uターン後に立ち上げた「理可(りか)」という商品も作りました。より穏やかな香りと食事に寄り添う味わいを追求したものです。
日本酒は嗜好品なので華やかなものが好きな人もいれば、落ち着いた味が好きな人もいる。自分の好きなものを造るという考え方で自分と同じ名前の『理可』を生み出しました。
また、一宮酒造ではスパークリング酒やリキュール、焼酎など多様な商品も手がけており、近年では「理可の実験」や「壱呑屋 TANE ~火入れ~」など新しい商品を色々とチャレンジしています。
- 酒米について教えてください
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酒造りにおいて、米は非常に重要な要素です。一宮酒造では、地元の農家と協力し、「改良八反流(かいりょうはったんながれ)」という酒米を使用しています。
もともと広島県で生まれた『八反流(はったんながれ)』という品種が元になっています。平成8年頃に地元の酒米を復活させようという動きの中で、試験場に150グラムだけ残されていた種もみを使って復活させました。
しかし、この酒米は栽培が難しく、一時は生産が途絶えていました。
その後、品種改良を経て「改良八反流」として復活。自社で復活させた酒米ということで、看板米として今もメインで、ずっと大田市で栽培していただいているものを使わせてもらっています。
- お酒はどんなお食事と合うのでしょうか?
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日本酒は幅広い料理に合うのが魅力です。私は食べることが大好きなので、お酒は食事の邪魔をせず、一緒に楽しめることが大事だと思っています。
例えば、「石見銀山」は華やかな香りが特徴で、すっと飲みやすく、「理可」はより落ち着いた味わいで、食事と寄り添う設計。比較的落ち着いた感じの穏やかな感じのお酒が好きだったので、酵母とかも変えて、ちょっと穏やかめで作ってみたいなって思って作り始めました。
日本酒は特定の料理だけでなく、普段の食卓で気軽に楽しんでもらえたら嬉しいですね。
女性杜氏として一宮酒造のこれから
- 杜氏を目指したきっかけについて教えてください
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私3姉妹の次女なんですけど、家業があるっていうのはぼんやりやんわり頭の片隅にはあった中で、姉妹のどちらも継ぐという話がなくて。誰が後を継ぐんだろうと漠然と色々考える時期が進路を決める高校2年生の時に考えて、やっぱり自分しかいないかなと思い、両親にも相談しました。
酒造りを学ぶため東京農業大学へ進学し、飲食店でのアルバイトなども行い、日本酒に対する理解を深めていきました。
飲食店で自社のお酒を扱っていただいていたのですが、お客様に質問されても表面的な知識しか伝えられないことが悔しかったんです。だったら、自分で造れば想いを直接伝えられる。そう思って、杜氏になることをしっかりと決意しました。
杜氏として女性がやっていく上で、いい面、悪い面、私もどちらもあると思っていて。
体力的なところでは私も体力も筋力もない方ではないんですけど、重たいものも持つのにも男性の方が筋力も多いですし、もっと力があったらなって思うことは今までもありましたけど、それはもうしょうがないと思って。
でも、そこは周りに助けてもらいながら、自分にできることを探し、役割分担をしてやっています。
現在夫も一緒に酒造りも行っています。
夫と私の好みも違うし、性格も正反対。どちらかというと旦那の方がすごく繊細で真面目で細い人で私は大雑把で、いいじゃんって思ってしまうタイプです。
でも、それがあるからこそ、新しい酒造りができると思うんです。
- 海外への展開について
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現在はアジア圏を中心に海外輸出も行っています。韓国、中国、香港、シンガポール、昨年からはドイツなどでも販売を行っています。
少しずつの量だけど、どこの国にどんなお酒が合うんだろうって、やっぱりワクワクする部分でもあります。
アジアとヨーロッパでこんな感じで、アルコール度数とか好みって違うんだなっていうのも知れるのも楽しいので、少しずつ販売先は機会があれば増やしていけたらいいなとは思っています。
SNS経由で海外から直接問い合わせが来ることもありました。どこでどんな縁があるかわからないので、アンテナを張ってチャレンジしていきたいですね。
- 今後どんなお酒造りがしていきたいのでしょうか?
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私と旦那の夫婦二人が中心となって酒造りをしているっていうのがうちのカラーだと思っています。
自分の好きな味もいろいろ違ったりとか、性格も二人で違ったりとかっていうところで、そこで生まれる新しいものがあったりとか、それぞれがこれやってみたい、あれやってみたいとか、こんなことしてみたいみたいな思いがある中で、あえてこの小さい蔵で自分たちが主体となってできるからこそできる、ちょっと面白いことをやったりとか、そういうことをさせてもらえる立場にあるので、とにかく楽しく皆さんに飲んでもらいたくて、それを引き立てるためのお酒を作りたいっていう想いです。
皆さんに本当に笑顔になってもらいたいっていう、それだけで今やっています。
一宮酒造について
取材を終えて感じたのは、浅野さんの酒造りへの純粋な愛情と、そこに込められた温かさでした。
「楽しく飲んでもらいたい」と語る姿からは、日本酒を特別なものではなく、日常の中で気軽に楽しんでほしいという想いが伝わってきます。大切な人と囲む食卓や、ゆったりと過ごす時間に、一宮酒造のお酒がそっと寄り添ってくれる。そんな風景を想像すると、心がほっと温かくなります。
また、夫婦で一緒に作っていくお酒がもっともっと世界を広げてくれている様子に、聞いている私もとてもワクワクしました。
伝統を守りながらも、新しい挑戦を続ける一宮酒造。そのお酒が、多くの人の笑顔とともにある未来が、とても楽しみです。
「楽しく飲んでもらいたい」と語る姿からは、日本酒を特別なものではなく、日常の中で気軽に楽しんでほしいという想いが伝わってきます。大切な人と囲む食卓や、ゆったりと過ごす時間に、一宮酒造のお酒がそっと寄り添ってくれる。そんな風景を想像すると、心がほっと温かくなります。
また、夫婦で一緒に作っていくお酒がもっともっと世界を広げてくれている様子に、聞いている私もとてもワクワクしました。
伝統を守りながらも、新しい挑戦を続ける一宮酒造。そのお酒が、多くの人の笑顔とともにある未来が、とても楽しみです。
プロフィール
- 一宮酒造(有)
- 〒694-0064
- 島根県大田市大田町大田ハ271-2
- 【TEL】 0854-82-0057
- 【FAX】 0854-82-9085
- 【営業時間】8:30~18:00
- 【定休日】土(不定休)・日・祝日
- 【メール】info@ichinomiya-s.jp
- 【HP】https://ichinomiya-s.jp
- 【Instagram】https://www.instagram.com/ichinomiya__iwamiginzan/