しまねの職人

【安来織】デザインから織りまで手仕事の伝統を繋ぐ

~藍染の糸とぬくもりのある模様の工芸品~

VOL.7

安来織 遠藤 京子さん

トントンと、親子3代に渡って使われてきた機織り機から心地よいリズムが響く工房。
デザインから糸の調整に至る工程は、すべて手作業で行われています。
最後に、藍色に染められた糸に機織り機で絣糸が一織ずつ
丁寧に織り込まれることで、ぬくもりある作品が完成します。

江戸時代に確立した技法を使う伝統工芸品の安来織は、かすれた文様が特徴の
絣をもとに生み出された絵絣の織物です。
横糸に絣を使用し、丁寧に藍染した糸とともに織り込んで絵柄を浮かび上がらせます。
非常に繊細な作業となるため、集中力が求められる作業です。

安来市に由来する安来織(やすぎおり)の制作者である遠藤さんにお話を伺いました。

安来織の歴史や特徴

安来織の歴史はいつから始まりましたか?
安来織が生まれたのは昭和4年頃です。夫の祖母(小間野)の時代に、河井寛次郎氏に「安来織」と命名してもらったことがきっかけで、本格的に制作がはじまりました。そこから母(千恵子)に引き継がれました。

私自身は最初から安来織を継ぐという意識はなく、織物にも興味はなかったんです。結婚して、祖母と母のお手伝いをしている間にいつのまにか自分でも作るようになり、今のような形になりました。

伝統工芸品として初代から技術を引き継いだ今も、昔と変わらない図柄で作り続けています。無理をせずにコツコツと取り組んできたことで、今まで続けてこられたんだと思います。
安来織の魅力を教えてください
温かみのある優しい風合いが安来織の魅力だと思います。

安来織は横糸となる絣糸で絵柄を織っていきます。特別な技術こそありませんが、織る際の力加減で作品の印象がずいぶんと変わるんですよ。

棟方志功氏がデザインした「織姫」という絵柄は、創業当時から根強い人気があります。

安来の地で繋ぐ技法、作品作り

製品を作るうえで心がけていることはありますか?
なるべく落ち着いて、優しい気持ちで織るようにしています。悲しい気持ちで織ると、作品の中に気持ちも一緒に織り込まれて悲しそうな作品に仕上がってしまうので、機を織るときは優しく向き合うようにしているんです。注文をいただいてから作るのがほとんどなので、喜んでいる様子やその方にあった優しさをイメージしながら、心を込めて織っています。

あとは、最初にしっかりと機を立てれば最後まできちんと織りあがる、ということをずっと聞いてきたので、そこも意識しています。

どのような作品を扱っていますか?
額縁に入れて飾る作品もありますし、着物やのれん、マフラーといった商品なども扱っています。昔ながらの技法のままで、今の生活様式に合ったふだん使いできるような商品もあります。コースターやブックカバー、カバンなどは目に留まりやすいのか、手に取ってくださる方が多いんですよ。作り方を工夫して、スマホカバーなども作れたらいいですね。

注文いただくときは、お客様と相談してデザインを決めています。文字を絣にしてくださいとリクエストをいただくこともありますよ。

贈答品として注文いただくこともあります。以前、友人のご兄弟が遠方の嫁ぎ先でご病気されたとき、気持ちを慰めるために島根に関わるものを病室に置きたい、と相談がありました。そのときちょうど出雲大社の柄の安来織があり、そちらを購入していただきました。
この先の技術の継承についてはどのようにお考えですか?
今は娘や孫も安来織に関心を持って手伝ってくれているので、私のときのように、手伝いながら少しずつでも学んでくれたら嬉しいです。
自然な形で誰かが携わってくれたらいいですね。一度技術が途絶えてしまうと、次の世代に繋ぐのは難しいと思いますので。
今後の展開や目標についてお聞かせ下さい
安来織をもっとたくさんの方に知ってもらいたいです。祖母の代から愛好して頂いている地元の方もいらっしゃいますが、私の代まで続いていることを知らない方もいます。

地域の方により関心を持ってもらえるようにと、喫茶店のギャラリーに置いてもらったこともありました。また機会があれば、ほかの場所にも置かせてもらいたいですし、今後は体験プランを提供することも考えています。意外にも若い世代で機織りをやってみたいという方が多いんですよ。今は機織り機の台数が少ないため実施は難しいのですが、ゆくゆくは台数を増やして、体験を通して機織りの楽しさを知ってもらえたらと思っています。

安来織(やすぎおり)について

工房内は広く、大きな作業台がいくつもありました。作業工程をお聞きすると、織物を作る過程で機織り機を使うのは最後の工程のみで、制作過程ではほんの一部分にしか過ぎないようです。絵柄の下絵書き、下絵を墨で糸に染める作業、藍糸を巻き取る作業など、どれも手作業で細かく、かなりの時間と手間がかけられていました。

昭和の初めに安来市で生まれ、昭和56年に島根県ふるさと伝統工芸の指定を受けた安来織は、ひとつひとつ丁寧に、優しい気持ちを込めて織られています。まだ手にしたことがない方もぜひ一度、安来織の美しい作品と技術に触れてみてください。

商品ラインナップ

プロフィール

  • 安来織
  • 〒692-0011
  • 島根県安来市安来町1397
  • 【TEL】0854-22-2578
  • 【FAX】0854-22-2578
  • 【営業時間】10:00~17:00
  • 【定休日】不定休

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