しまねの職人

【大社木工】出雲大社の縁起物「福こづち」

~天然木を優しいフォルムへ、お祝いに心を添える工芸品~

VOL.8

株式会社大社木工 尾添 大祐さん

縁結びや五穀豊穣の神様として祀られている出雲大社のご祭神「大国主大神様」。
「だいこく様」とも呼ばれ、打ち出の小槌を手にしていることでも有名です。

出雲市大社町にある株式会社大社木工では、縁起物である打ち出の小槌にちなんだ伝統工芸品「福こづち」を代々作り続けています。

福こづちは出雲特産の欅(けやき)を使用しており、小槌の中央にハッキリとした木目があるのが特徴となっています。大社木工ではこの福こづちを年間約5万個、制作・販売しています。

島根県出雲市で伝統を守り続ける福こづちの制作者、尾添さんにお話を伺いました。

だいこく様が持っている打ち出の小槌を出雲大社のお膝元で制作

福こづちが誕生したきっかけを教えてください
大社木工は昭和22年に創業し、はじめは電柱の腕木を作っていました。しかし、時が経つにつれて電柱がコンクリート製に変わっていったため、事業が立ち行かなくなりました。そこで、島根で一番有名な出雲大社の「打ち出の小槌」にちなんだお土産品を作ってみてはどうか、という案が出たのです。そのような経緯で「福こづち」の制作が始まったと聞いています。
福こづちの魅力を教えていただけますか?
木目がハッキリしている欅(けやき)の木で作っているため、中央の木目がきれいで、なおかつ重量感ある構えに仕上がります。同じ大きさの商品でも木目が違うので、一つひとつが世界で唯一の作品であるところも魅力的で面白いです。

制作の際は、商品すべてに対して丁寧に、お客様に喜んでもらうことを意識しています。お客様にとっては手に取った商品がすべてなので、がっかりされないよう、ひとつずつ心を込めて手作りしています。
この仕事を始めたきっかけを教えていただけますか?
跡継ぎがいないから継いでくれ、と父から言われたのがきっかけです。28〜29歳の頃に、営業職として大社木工に入社しました。この仕事を始めるまでは一切木工に関わっていませんでしたので、この道に進むなんて想像もしていなかったですね。

初めは営業として外回りをしていましたが、営業先で商品の詳しい話を求められると、うまく説明できなかったんです。その時に商品を知ることが大事だと気づき、工場に入って商品について勉強するようになりました。その頃からインターネット販売が順調になったので、弟が営業を担当し、私が工場で商品づくりを行うようになりました。

10年以上経験を積んだいまでも材木の仕入れには悩みますし、目利きはまだまだ勉強中ですね。

還暦などのお祝いにもぴったりな、全国的にも珍しい木製の「福こづち」

仕事をするうえで大変だったことはありますか?
木製の打ち出の小槌を作っているのは全国的にも当社くらいなので、誰にも相談できず苦労しました。職人も高齢化する中で、代々引き継がれてきた技術を身に付けるのは大変でした。

打ち出の小槌がいいものだという自信はありましたが、実際に買っていただかないと経営が成り立ちません。初めの頃は景気の影響もあり、観光客が出雲大社に来てもお土産物が売れなかったんです。また、当時はインターネット販売も行っていなかったので、経営面で苦労しました。

そのような状況の中、社内での話し合いで、還暦祝いの贈り物として提案してはどうか?という案が出ました。還暦祝いの記念品としてや具体的な使い方を提示して販売を始めたところ、売り上げが伸びるようになりました。

また、出雲大社のお膝元で作っていることは、大きな強みになっていると思います。何も関係のない東京で作るのと出雲で作るのとでは、商品価値が変わってくるはずですので。
お客様からの声で印象に残っていることはありますか?
「贈った相手の方が涙を流して喜んでくれた」「のし紙もずっと大事にするよ」など、うれしい声をたくさんいただいています。強く印象に残っているのは、東日本大震災で被災されたお客さまですね。もらった小槌が水没してしまったとのことで、お客様から修復をお願いされました。あいにく修復はできませんでしたが、事情も事情なので、代わりに全く同じ小槌を差し上げたんです。そうしましたら、ショックを受けていたお客さまにすごく喜んでいただけて。そのときのことが強く印象に残っています。

伝統工芸を広めるためにSNSも活用。
職人が代々引き継いできたものを、丹精込めて真剣に作り、自信をもって送り出しています。しかしそれを広く認知してもらうためには、ただ良いものを作るだけでなく、良さや用途の説明も大切だと思っています。

そのためにブログやSNSでも発信しています。若い世代の方は自分用としては買わないですが、ご両親へのプレゼントに選んでもらえているようです。今はほとんどの人がスマートフォンを持っているので、空いた時間に調べて買ってもらえるようにと、インスタグラムを中心に発信しています。福こづちのフォトコンテストなども開催し、たくさんご応募いただきました。
福こづちの未来についてはどうお考えですか?
現状では、商品の多角化というのは考えていません。それよりも、福こづちをもっと多くの方に知ってもらえるよう、さまざまな販売方法を考えています。出雲地方に住んでいても知らなかった、という声もいただくので、もっとたくさんの人に広めたいと思っています。

事業の継続という意味では、自分には息子が2人いて、弟にも息子が2人いるので、将来誰かが継いでくれたら嬉しいです。誰が継ぐにしても、あと数年のうちに社長の右腕・左腕となる人材の育成が必要です。技術もそうですし、経営も引き継がなければなりません。実は近いうちに募集をかけたいと思っているところです。特に若い世代が入社してくれることを期待しています。

福こづちについて

福こづちは木製でありながら、とても重量感があります。また、年月が経てば経つほどつほど色艶が増し、よりその美しさを楽しめます。各種お祝いごとの贈り物としてさまざまなサイズを取り揃えているほか、純金箔の小槌や刻印サービスも対応可能とのこと。贈答品にお悩みの際は、ぜひ縁起物の福こづちも検討してみてください。

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