しまねの職人

【吉田酒造】次世代へ続く、しまねの日本酒

~硬度0.3の超軟水で造るこだわりの酒~

VOL.25

吉田酒造 吉田智則さん

創業約270年、安来市広瀬町の吉田酒造では、
島根の名水百選に指定された超軟水と言われる水と地元の契約農家で栽培した米を使い、
フレッシュで香りの高い日本酒「月山」を造り続けています。

また台湾・中国・カナダ・ブラジルなど海外に輸出。
2016年「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で金賞を受賞。
昨年(2022年)5月にはインターナショナルワインチャレンジのスパークリング酒部門で、
「スパークリング クラウド」がゴールドメダルを獲得されています。

昨年からさらに飲む人を最優先に考えた新しい瓶詰めの工場を整備するなど、
広く日本酒に親しんでもらおうと奮闘する吉田智則さんにお話を伺いました。

最高なものを最高な状態で

酒造りの特徴やこだわりなどを教えてください。
日本で最も柔らかい水を使って日本酒を造っている蔵元だと思っています。
これ以上の軟水を使っているところは聞いたことがありません。
硬水はミネラルが含まれているので酵母が活発に増殖しやすく酒が造りやすいのですが、軟水は酵母への栄養供給が米からだけなので、これが不足するとすぐに酵母の増殖が阻害され醗酵不良に陥ってしまいます。

蔵では1人の杜氏と7人の蔵人が交代で作業しています。
日本酒は寒仕込みと言って寒いときに仕込みますが、ここでは冷蔵設備を整え、冷蔵庫のようなところでやっています。これにより気候などに左右される事なく安定した酒造りが出来るようになりました。通常より長い期間お酒を仕込む事が出来ます。

完成したお酒はタンクでの保管をしていません。これには理由があります。通常、タンクで貯蔵をする際は、熱処理をタンクごとに行う事になり、容量の大きなタンクだとその熱が3~4日は冷えません。その間にお酒は熱で熟成が進んでしまい、香味が変化してしまいます。それを避ける為、できた酒をすぐに瓶に入れて保管します。瓶に入れてから熱処理を行うと、高い温度の状態が短くなってフレッシュで香りも壊れることがありません。
すぐに瓶詰めをすると保管用冷蔵庫などの設備代、光熱費の負担は増えますが、お客様にとっては美味しいお酒になります。蔵元の都合ではなく、お客様の目線で作っていきたいので瓶貯蔵にしています。
この瓶で行う熱処理と貯蔵により絞った直後の状態に近いお酒を出荷することが可能になりました。僕らが最高だと思うものを最高の状態でお客様のもとに届けるということを意識しています。
吉田酒造の日本酒の魅力について 
造り方に特徴があって、超軟水での仕込みでは硬水に含まれるミネラル等の補助栄養が無い分、酵母が増えすぎると米からの栄養供給だけでは賄いきれず、醗酵が止まってしまいます。これを避ける為温度を低く10℃くらいに抑え酵母の増殖を抑制する必要があります。これは通常の蔵では大吟醸等の超高級酒を仕込む作り方です。こうすると香りが出てきれいなお酒になります。それがうちのイメージです。
軟水で仕込んだ日本酒は、日本人の身体に馴染みやすいお酒だと思います。
輸出もしていますが、飲んだ方からは飲みやすくて香りがいい、シルクのようだという感想をいただきました。ワインと遜色なく、これを米で作ったのかと驚かれました。

幅広い世代に日本酒を

日本酒に親しんでもらうための工夫などがあれば教えてください。
ラベルの色をお客様が見たとき、わかりやすく
次に買うときに思い出していただけるように酒の味がリンクしてイメージできるように作っています。
辛口は青、緑はメロンやマスカット系の香り。ピンクは熟した甘いフルーツの香り。赤いのはリンゴの香りなど。ロゴは山と月で月山をイメージしています。

日本酒を飲み慣れていない若い人たちにも、喜んでもらえる酒を先導したいと思って造っています。そこから日本酒全体に興味を持ってもらい、熟成酒や燗の奥ゆかしさなどを楽しむなど、いろんなお酒を飲んで新たな発見をしていただきたいと思います。

日本酒の良さは料理に寄り添えることです。島根には美味しいものがたくさんあって、合うものを探すのが楽しいですし、見つけた時の喜びがあると思います。

若者の酒離れが課題ですが、最近は若い女性の来店が増えています。
女性が詳しくなると男性もつられて興味を持って頂く機会も増えます。

若い人向けには、乾杯がきっかけになればと思い軽くてシュワシュワしたスパーリングの日本酒も作りました。
海外でははじめの一杯を飲んでいただけるのが飲食店なので、飲食店に強いつながりのある輸出先を見つけることが大事だと思っています。
カフェやイタリアン、フレンチの店で日本酒の会をやってみたいです。
今後の夢、目標を聞かせてください
僕は5代目ですが、最初は全く継ぐ気は無く、両親も何も言いませんでした。大学卒業後も航空系の商社で働いていましたが、この蔵が有ったからこそ好きな事をさせてもらえたとの思いもあり、育ってきたところに帰ってきました。
3人息子がいるのでどうしたら後継者としてやりたいと言ってもらえるか。
きれいな状態で渡してあげたいと思い、詰めの工場を整備しました。日本酒に未来があるならやりたくなると思っています。
輸出もキーワードで、月山を売っていたら海外に行ける!と思うと、やる気になると思うし、お客さんが飲んで喜んでいる姿も見せたいなと思います。

島根の日本酒は少しずつ認識されるようになったと言われますが、まだまだだと思っています。
海外に出て行っている中で、日本酒イコール日本と捉えてもらっていますが、日本酒といえば島根と言われるようなブランドを作っていきたい。世界的な確固たる地位を築いていきたいと思っています。

吉田酒造について

吉田酒造から見える山「月山」には戦国時代の難攻不落の富田城があり、その年に一番良い仕上がりの酒にその山の名前をつけ、献上していたという歴史があるそうです。
今も想いを受け継ぎ、約300年のこれまでの伝統は守りつつ、飲む人に寄り添った酒造りを丁寧に行う吉田酒造。

普段飲んでいない人にも、きっかけとして「日本酒で乾杯」運動や、インフルエンサーとの連携で、自社だけでなく広い視野で日本酒を捉えてどう広げていくかを考え、今まで出会う機会のなかった人への発信もされています。イタリアンやフレンチ、カフェなどを集めた日本酒の会もやっていきたいと話されていました。

日本酒ブームと言われることもありますが、一時的なものでなく普遍的に続いていく要素がここにはたくさんあると感じました。

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