島根の暮らしには、職人たちの情熱と伝統の技術によって支えられてきた、数多くの工芸品が息づいています。
古くからの手仕事を守りながらも、時代の変化に合わせて新たな表現を模索する作り手たち。
その中で、島根県松江市に窯を構える「出雲本宮焼」は、この土地の風土に深く根ざしながら、現代の暮らしに彩りを添える器を作り続けています。
今回は、故郷の風景、特に宍道湖の美しい夕景を器に映し出す陶芸家、高橋 幸治さんに、その道のりや作品へのこだわり、そして未来への想いについてお話を伺いました。
古くからの手仕事を守りながらも、時代の変化に合わせて新たな表現を模索する作り手たち。
その中で、島根県松江市に窯を構える「出雲本宮焼」は、この土地の風土に深く根ざしながら、現代の暮らしに彩りを添える器を作り続けています。
今回は、故郷の風景、特に宍道湖の美しい夕景を器に映し出す陶芸家、高橋 幸治さんに、その道のりや作品へのこだわり、そして未来への想いについてお話を伺いました。
出雲本宮焼について
- 陶芸の道を志したきっかけを教えてください
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自分の責任で作って、自分の責任でおわれるような、結果もその自分に伴うみたいな、そういうところに魅力は感じましたね。焼き物の仕事の場合は1から自分で始めて全部完結するまで、評価も自分のところに評価が来るという。
また、焼き物は材料の全部が自分で作れるんですね。土から全部ですね。薪も窯も。そういうところに魅力があります。
- 益子と沖縄での修行は、どのような経験でしたか?
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最初の修行先に選んだのは、栃木県の益子焼でした。知り合いもいない土地へ一人で行き、先生を探して弟子入りをお願いするところからのスタートで、ある種の賭けのようなものでしたね。そこで陶芸の根幹を1から教えていただきました。
その後、誰も知らない場所で挑戦したいという気持ちから沖縄へ渡りました。
沖縄は「民芸の里」であり、離島であるがゆえに独特の工芸文化が育まれています。
材料を仕入れるにも送料がかさむため、その土地にあるもので全てを賄うという、ものづくりの本質が昔ながらの形で残っていました。
作品は技術だけでなく、その土地や人が作る「空気」によって生まれるもの。沖縄での経験は、故郷に帰ってから自分の焼き物を模索するための、良い訓練になったと感じています。
- 「出雲本宮焼」の名前の由来を教えてください
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私の工房の近くにある「本宮山(ほんぐうざん)」という山から名前をいただきました。
この辺りは、かつてお殿様がいた城下町で、本宮山には城跡も残っています。その歴史ある土地の名を冠しています。
- 故郷・島根で独立された経緯を教えてください
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故郷に両親がいたことは、独立する上で最大の利点でした。
その繋がりを頼ることで、土地探しといった最初の関門を乗り越えることができました。
また、登り窯の煉瓦をほとんど費用をかけずに手に入れるなど、人の縁や幸運にも恵まれ、制作活動を本格的にスタートさせることができました。
ものづくりへのこだわり
- ご自身の「意図」と、窯が生み出す「偶然」その関係をどのようにお考えですか?
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作り手として「こういうものを作りたい」という設計思想は、もちろん一番大事です。窯もその意図を実現するために自分で設計しますから。しかし、炎の力は人間の計算通りにはいきません。その予測不能な部分、つまり偶然性こそが、登り窯の一番の魅力だと考えています。
自分の考えを押し通すのではなく、窯が示してくれる道を素直に受け入れる。その先にこそ、思いがけない発見があるんです。「夕景シリーズ」は、窯が教えてくれた新しい可能性を形にした、何よりの証明ですね。
- 作品のテーマは、どのように生まれるのでしょうか?
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地元に根ざしたものです。
例えば「ラテ茶碗」は、朝日が上がって朝になって、それから夕方になって、日が沈むまでのあの色合いの雲の景色を表現しているんです。それは沖縄で学んだことですね。
ここでやっていれば、ここでやっているだけで意味のあるものが生まれないと、ものとして成り立たないというような気がします。
出雲本宮焼のこれから
- 今後、どのような器造りをしていきたいですか?
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結局、私は自分の「作りたい」という気持ちに正直でありたいだけなんです。
小難しい理屈をこねるより、まずは自分の心が動くものを作りたい。
そして、それがお客様の暮らしの中で何かを感じてもらえるきっかけになれば、作り手として満足です。
評価は、理屈ではなく、日々の暮らしの中にあるのだと思います。
出雲本宮焼について
高橋さんのお話からは、一貫して「自分の責任で、ものづくりの根源に向き合う」という強い意志が感じられました。
沖縄で学んだ「その土地の空気」を大切にし、故郷・松江で築いた登り窯との対話から代表作を生み出す。
その姿勢は、伝統に敬意を払いつつも、常に「新しく、明るい」未来を見据えています。作り手の言葉の端々から、その飾らない人柄と、ぶれない信念が伝わってくる時間でした。
沖縄で学んだ「その土地の空気」を大切にし、故郷・松江で築いた登り窯との対話から代表作を生み出す。
その姿勢は、伝統に敬意を払いつつも、常に「新しく、明るい」未来を見据えています。作り手の言葉の端々から、その飾らない人柄と、ぶれない信念が伝わってくる時間でした。
プロフィール
- 出雲本宮焼
- 〒690-0264
- 島根県松江市大野町2324-3
- 【TEL】0852-88-2502
- 【HP】https://www.saeaf63g.jp/















